目覚めの時は、今

(もう、可愛いなぁ、ハルちゃんは。)
私のアドバイスを聞いて、少しずつおしゃれを楽しむようになってきた彼女の横顔を見て嬉しくなる。
可愛い生徒の一人、だった。入学後すぐにパートナーを失ってしまった彼女。必死に新たなパートナーを求めていた時も、見つからなくて課題がこなせないと分かった時も、めげる事無く必死に食らいつくように自分の音楽を紡ぎ続けた可憐で強い女の子。
この世界、運も交渉も大事な才能の一つだから必要以上に教師が手を差し伸べることは出来ない。パートナーが必要な課題を別のものに振り替えてあげるくらい。
でも、彼女の才能に揺り動かされた同じ音楽に愛された子たちが手を差し伸べる。それもきっと彼女の才能。彼女のために未来をかけることが出来るくらいあの子達の絆はこの短い間にとても強く結びついた。きっと私もその一人。彼女の音楽に、そして彼女自身に自分の全てが突き動かされていると感じる。
全てに自信がなくて俯いて歩いていた時出逢ったシャイニーに導かれるまま、男の娘アイドルとしての人格を生きて来た私。龍也と春輝と3人で歩いてきた道はとても苦しいけど楽しい道だった。だけど其処に本当の男である「月宮林檎」は何処にもいなかった。

彼女の才能をつまらない決まり事で失ってしまわない為に教師としての全てを賭けて、傍において見守ってきた。教えることをどんどんと吸い込んで大きく育っていく彼女が可愛くてしょうがない。自分の未来だけでなく、あの子達や私の未来まで背負って、それでも笑うあなたの歌なら、きっと私のクラスの子達も自信を持ってくれる。
私を見つめてくれるきらきらとした瞳に恋を見つけた時、その瞳に映る自分も同じ色をしてるって気付いた。教師としてではなく先輩としてでもなく彼女の傍にいたい。男として彼女の隣に立ちたい。そんな気持ちは初めてだった。春歌になら、本当の俺……男の林檎を見せてもいいのかもしれないと思った。

龍也に釘を刺されたけど、そんなの関係ない。やっと男としての林檎に戻れそうなんだ。

待っていて、春歌。きっと上手くいく。
ご褒美は、終わりじゃなくて二人の始まりの日。
誰にも見せたことのない俺を、春歌にあげる。



end.

林檎先生です。
恋愛禁止をいちばん軽やかに突破した林檎先生でした……。
この人、ずるいよ。うん。
でも、書くの難しい。口調とかがめちゃくちゃだ。

2011/12/11


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