始まりは夕凪の海

これはGREE薄桜鬼の原田さんの誠エンド(ノーマルエンド?)をモチーフにしています。
おもいっきりネタばれです。
やってる最中の方は、気をつけてください。
























今日もあの人は、来ない。



父様を決別をした日。
父様とのやり取りをどこからか見ていた者がいたのだろう。

左之助さんが「上野で死んだ」という不知火さんの流してくれた嘘を鵜呑みにしなかった新政府の一部から左之助さんと私は追われる身となった。どれだけ江戸を離れても、追手は消えなかった。左之助さんは何度も何度も私だけを逃がそうとしてくれた。だけど、私はその言葉に頑として頷かず必死に2人で逃げ続けた。
その中で、二人で下した決断。日本を出る、ということ。
このまま、日本に居たのでは二人が穏やかに暮らすことは出来ないだろう。だから、二人で大陸へ行こう、と。

そして、船で日本を離れる日。

左之助さんは船に乗らなかった。

一人船に乗せられ、「話が違う!」と泣き叫ぶ私を見詰めて悲しげに微笑む左之助さんの顔だけを覚えている。

「直に追いかけるから」「俺がこんな所で死ぬわけないだろう」
そういって私を見送る左之助さんはきっと笑っていたと思う。船の欄干にしがみ付いて泣きじゃくる私にずっと大丈夫だと、言い聞かせるようしていたはずだけど、私の涙でゆがんだ眼には見えなかった。だから、最後の記憶は、どうしてもあの悲しげな微笑み。


岸が見えなくなるまで泣きじゃくり、長い船旅の間をただ呆然と過ごした私は、一人大陸に降り立った。


左之助さんが世話を頼んでいた人は、一人やってきた私を見て、「あいつはしょうがねえ男だな」と苦笑すると医者を紹介してくれた。その先生の元で、医術と言葉を学びながら、日々の糧を得ている。左之助さんと再会して暮らしていく時にもきっと役に立つ事だろうからと必死に医術を学び、日々やってくる患者さんの治療の手伝いをする。その合間をぬって、港に船が着く度に左之助さんを探して、見つからないまま家に帰る。
もう何回繰り返したのだろう。

日付を数えるのは、もうやめてしまった。
日々積み重なっていく、医術の知識と大陸の言葉が、左之助さんを待って過ごした日々の長さを物語る。

どうしようもなく動けなくなると、一人夕暮れの海岸で、赤く染まる海を眺めて過ごした。
この海の向こうに日本がある。あの人と出会い、生き抜いた。だけど、二人の生きていける場所のなくなってしまった日本。船に飛び乗って左之助さんを探しに行きたいと願う心をわずかに残った理性だけで必死に押さえつける。
全てが赤く染まる夕暮れに包まれていると、あの人の傍に居る時のようにすこしだけ穏やかな気持ちになれた。左之助さんは、夏の太陽の様な人だったけれど、私の隣に居る時は穏やかな夕日の様な人だったから。その夕暮れの中ですこしだけ泣いて、左之助さんのいない日々に立ち向かう様に立ち上がる。

ただ、二人静かに生きていきたいだけだったのに、どうして離れてしまったのだろう。





今日も、一人夕暮れの海岸に来ていた。

いつもと同じ様に港に左之助さんの姿はなかった。
左之助さんの髪と瞳と同じ、赤と金茶で染まった海を眺めて溜息を吐いた。
(今日も駄目だったなぁ。……もう、随分言葉覚えちゃいましたよ。左之助さん。)

「……千鶴。」

ぼんやりと海を眺めていると私を呼ぶ左之助さんの声が聞こえる。随分ハッキリとした幻聴だ。そんなに参っているのだろうか。疲れを振り払う様に頭を軽く振ってみる。
「ああ、疲れてるのかしら。今日は早めに休もうかな。」
ぽつりと独り言を呟いて、家に戻る為に立ち上がろうとした時だった。

「……わりい、早く休ませてはやれねえなぁ。」
独り言に返事が返ってくる。はっとして振り返ると、そこには大きな人影。逆光で顔が見えない。だけど、わかる。
「………さ、のす、け……さん?」
「おう、千鶴、待たせた。」
呆然とその人影を見つめて動けない私に、どんどん近付いてくる人影が私を抱きしめた。一度ぎゅっと抱きしめられると左之助さんの匂いがした。本当に左之助さん?私は夢を見ているのだろうか?抱きしめていた腕が緩められると頬に触れる手が私を上向かせる。そしてやっと人影の顔が見えた。その顔に私の目からはぽろぽろと大粒の涙がこぼれる。
「わりい。乗った船が違う港に着く船でな。陸路でここまできたら随分掛かっちまった。」
零れる涙を指で拭いながら、左之助さんの口付けが顔中に降り注ぐ。その懐かしく優しい感触に私の涙腺はもう止まらない。もっとしっかり左之助さんの顔を確認したいのに、もう涙でゆがんで見えなくなってしまった。
「ずっと待ってたんですよっ……もう、逢えないのかって……。宇都宮で私を引き留めたのは左之助さんなのに!あんな風にお別れするなんて……!!」
「ああ……そうだな、悪い。」
「もう、大陸の言葉もたくさん覚えちゃいましたよ!……左之助さんがいつまでも来てくれないから!」
ずっと言いたかった言葉を、左之助さんの胸に縋り付く様にぽかぽかと叩きながら必死に紡ぐ。泣きながら叩く拳に力が入るわけも無く、びくともしない左之助さんは、だけど涙で乱れる言葉を一つ一つ胸に刻みつける様に受け止めてくれた。

「千鶴、もう、離さねぇ。」
「はい。」
左之助さんは私をまたぎゅっと抱きしめて、誓う様に耳元で囁いた。その言葉に大きく頷いた私に左之助さんの身体が大きく震えたのが分かった。
「どんなに天秤にかけたってお前を選ぶって誓ったはずだったのにな。」
その言葉も、震えているように聞こえた。その背中に精一杯腕を伸ばして抱きしめると、左之助さんの腕にいっそう力が篭って痛いほどに抱きしめられる。だけど、苦しいとは思わない。昨日までの離れていた時間の方が何倍も苦しかったから。左之助さんも苦しかったのだとわかったから。


「ここから、始めよう。俺たちの日々を。」
「はい。二人の夢を現実にしましょう。」
しっかり二人手をつないで、夢への道を歩きはじめた。



end.

春くらいからGREEやっててその薄桜鬼で左之さんをやってたんです。
で、課金しないと駄目なアイテム(運が良いと無料でも手に入るけど)がないとGOODENDがみれないらしいのです。
2週間ほど前にクリアしたんですけど、もちろんアイテムない状態でしたのでノーマルぽいエンドを見ました。
それが、この前半の内容。
父様を倒す所までは一緒でエピローグが変わるみたいで。
左之さん、千鶴だけを船に乗せちゃうんですよ!
で、千鶴が大陸で来ない左之さんを待っているというモノローグで終わり。

納得いくか〜〜!と悶々としたので、それなら再会させちゃえ!と勢いだけで書きました。

正直、こんなの左之さんじゃない!とか思いましたよ。
何があろうと千鶴を手放さないのが左之さんだと思うのですよ!ええ!

クリアした後になって幸運にもアイテムが無料で手に入ったので、もう一回原田さんをやっています。
本当はBADみようかなと思ってたんですけどね。

それが終わったら一さんやろうかな。

2011/06/19


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