桜、舞い散る

※死にネタです。ご注意を。







綱道、羅刹との戦いが終わった。多勢にたった二人で向かったが、全てが終わった。
これでもう、新しい羅刹は生まれない。残る羅刹は新選組の者たちだけだ。その辺は、土方さんがなんとかしてくれんだろう。あの人に任せておけば大丈夫だ。山南さんはかなり不安定になっていたが、平助もいる。あの忌まわしい闇を断ちきることが出来たなら、新八を残して江戸に戻った甲斐もあったんだと思う。

俺は腹に負った傷を押さえながら木陰に腰を下ろした。さすがに血が流れ過ぎたようだ。
その傍に不知火が腰を下ろし、これからの事を聞いてくる。その言葉に、新八の所に戻ると返事をして、目を閉じる。情けねえが、疲れたみたいだ。瞼が重い。少し休んでから、新八の所に戻る事にしよう。


眼を閉じて浮かんだのは、最後に見た千鶴の笑顔。
父親を探して新選組で長い時を過ごした千鶴の事を考えると、心が痛む。ただ、綱道はもう、千鶴の知る優しい父親ではなかった。仕方ないと分かっていても、千鶴は泣くんだろう。
その、涙を拭ってやりたいと思う。
最初は、妹の様に思っていた。守ってやるべき者、だか命が下れば斬って捨てる。だか、いつからか、あいつは俺たちの仲間になっていた。いつの間にか、俺の心に住み着いた大切な存在。


俺の手で、女に戻して普通の生活をさせてやりたかった。
俺の手で、幸せな笑顔にしてやりたかった。


だが、あいつの見つめる先には、あの人がいた。
孤高の背中を追うあいつは、今、どうしているのだろうか。


里をなくし、兄を失い、養父を失って。
全てを失ったあいつの居場所は、あの人の隣にあるのだろうか。
あってくれ。全てが終わった時に、あいつが心からの笑顔で微笑んでいられるように。


いつか京の頓所で共に見た、桜吹雪に微笑むあいつを思い出す。
その時の幼い笑顔が、大人びた顔に変わる。その隣には・・・。その顔を認識した瞬間、光景が桜吹雪とともに弾け飛ぶ。

ああ、大丈夫だよな。あんたなら。

どうか、幸せな未来を愛しいあの娘に。


そう願うと、俺は深い闇へと意識を落とした。



end.

アニメ版左之さんの最後です
あの左之さんは、きっと新型羅刹と綱道さんを止める為だけに江戸に戻ったんだろうけど
仲間の障害になるだろう者を排除するためだったんだろうけど
その心のどこかに千鶴を想う気持ちがあったらな、と
千鶴への大きな愛と土方さんへの深い信頼を表現出来てればいいのですが

あの話を見た時は本当に泣きまくりました
実はあまりのショックにその先はいまだに見れてません
いつ見る勇気が出るかな?

2011/01/31


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