「女だから」じゃなく「千鶴だから」守りたいと思うようになったのはいつからだろう。
周りは男ばかり、味方も居ないそんな頓所で必死に居場所を作っていくお前を、妹のようにかまっていただけだったんだがな。千鶴のほうも兄や父親のように慕ってくれただけだろうにな。
島原で着飾ったお前の紅を直してやりながら見つめあっていた時、浪士が乗り込んでこなかったら。ただ目に焼き付けるだけで済んでいただろうか。・・・自分の中に起きていた衝動を止めることが出来ていただろうか。
お前と話すたび、お前の髪を撫でるたび、お前を後ろに戦うたび。
増していくお前への気持ちを俺はどうすることもできす溜めこんできた。
俺に新撰組で戦うことと女を愛することは両立できない。半端なことが出来ない性分もあるが、死地へと向かう男と愛し合うことは、女にとって幸せなこととは思えねぇ。
かといって俺があいつらのように新撰組という「舞台」を降りることなんて出来ねえ。そこまでの覚悟が持てないでいた。
あいつらはすげえと思う。こんな決断をしたんだ。羨ましい、そう思ってしまうほど、あいつへの想いは大きくなっていたんだろう。いつか、千鶴は俺の全部になるんだろう。そんな予感があった。
鳥羽伏見の戦いで不知火に襲われたあいつを助けられなかった時から、俺は千鶴を避けるようになった。どうにも顔を合わせることが出来なかった。
あの時、助けるどころか、庇われた上にけがまで負わせちまった。俺にはあいつを、惚れてる女を守れなかったという事実にただただ打ちのめされていた。
銃に打たれたあいつの怪我がみるみる治っていく様を、おれはただ見つめることしかできなかった。
「鬼だから」と自分を傷つけるようにつぶやく千鶴に、おれは何も言うことが出来なかった。
本当になさけねえ。俺は仲間を守るために、大切なものを守るために、戦ってきたはずだった。でも、女一人守れねえ男だったんだと思い知らされた。
・・・・そうだ。千鶴は鬼だけど、俺にとってはただの女で。守ってやりたい惚れた女なのに。
ああ、いつもそうだ。
大事なことには後になって気付く。相手を傷つけた後になって。
で、キスで引き留める左之さんへと続く。
島原の記憶から始めて、最後のセリフで閉めるのは決まっていたんですけど、あれだけ千鶴から逃げていた左之さんがどうして千鶴の前に立ち塞がったのか。というところを書いてみたくて始めたのですが!これがなかなかどうして難しくて。
おまけに構想中に黎明録やっちゃってもう、どうしようかと。
それでも書きたかったのは、千鶴が左之さんの「全部」になるまでの過程を考えてみたかったから。でしょうか?
この時点では、もうひと押しといった加減?
次こそはもうちょっとモノローグじゃないのものをアップできたらと思います。
2010/11/16