WEB CLAP LOG 11

さみしいきもち、いとしいきもち

「お、起きちまったか?」
「……あれ?……私、どうして。」
ふっと覚醒してぼんやりとしたまま、声のした方を見ると、永倉がバツの悪そうな苦笑を浮かべてこちらを見ていた。なんで自分が寝ていたのか、どうして永倉が横で寝ているのかが分からなくて千鶴はぼんやりとした頭のままで永倉の目を見詰めてしまう。
「すまねぇ。無理させちまったな。まだ夜だから寝てろ?」
「……無理?……あっ。」
そういえば、と思いだす。今夜は帰らなくていいのだ。
初めて永倉の家に泊まることになった。千姫にアリバイをお願いして、いろいろ準備して。何度も遊びには来ていたから勝手知ったる彼氏の部屋。だけど初めて泊まるとなると、やっぱりドキドキして、散々千姫にからかわれた。そうしてドキドキするのは永倉も一緒の様で、すこしいつもと違う時を過ごした。家に帰る事を心配しなくてもいいという安心感からだろうか、いつもより少し激しく求められた気が、する。そのまま意識を手放したらしく、身体中が気だるい。いつだって永倉の求めるままに恥ずかしいと思う暇も無く乱れているけれど、今日はそれ以上だった気がする。思い出すのも恥ずかしいけれど、永倉の想いが直に伝わってくる気がして、幸せな時間だった。
いつもなら、とっくに自分の家に帰って一人眠っている時間。だけど、今日は大切な人の腕の中だ。ふんわりとした毛布にくるまれて、永倉の腕枕。そっと壊れものに触れる様に千鶴の頬や額を撫でる永倉の掌がごつごつしているけど優しくて気持ちがいい。
数時間前の情事を思い出して、頬を真っ赤に染める千鶴に永倉は、本当にすまなそうに謝ってくる。
「本当に無理させちまって……、ごめんな。千鶴ちゃん。」
「どうして謝るんですか?」
「いや、だってなぁ。なんか覚えたてのガキみたいにがっついてるだろ、俺。そのうち千鶴ちゃんを壊しちまうんじゃないかってな。千鶴ちゃんが気ぃ失っちまってからすげー怖くなったんだよな。」
「……でも、私、嬉しいです。」
がりがりと頭を掻きむしりながら辛そうに告げる永倉を、千鶴は真っ直ぐに見つめてそっと永倉の頬に手を伸ばす。永倉の率直な言葉に赤面したけれど、自分の気持ちを正直に口にする。しっかり言葉にしなければお互いにすれ違ってしまうから。付き合い始めてから決めた二人の約束。
それでも、千鶴の口からこぼれた言葉に永倉は目を見開いた。
「だって、新八さんの隣にいていいんだって思えるから。……妹分じゃなくて、ちゃんと恋人なんだなって解るから。それに今日はずっとここに居れるから……すごく嬉しい。」
「千鶴ちゃん……。」
「それと、また戻ってますよ。永倉さん?……そういう時だけしか千鶴は新八さんの恋人じゃないのですか?」
そっと触れていた永倉の頬をちょっと摘んでわざとらしく永倉を名字で呼んだ。いつまでたっても千鶴を「ちゃん」付けする癖が取れない永倉は、千鶴の真っ直ぐな想いに顔を真っ赤に染めて、またがりがりと頭を掻きむしる。いつだって千鶴を大切にしたいと思う。だけどその気持ちが空回りをしてしまいがちな永倉を、こうして千鶴がきちんと言葉にして引き戻してくれる。可愛くて華奢なその身体のどこにそんなに強い気持ちが隠れているのだろう。
「ああ、わるい。……情けねえな、俺。でも、千鶴は俺の大事な恋人だぞ。呼び方がどうあろうとも、いつだってずっとな。」
「はい。」
わかっています、と笑う千鶴に永倉は敵わないなと、苦笑する。千鶴はふふっと笑うと永倉の胸元に擦りつく様に頬を寄せる。
「ほら、もう寝ろ?」
「はい。」
千鶴の頬をもう一度そっと撫でるとそのまま、千鶴をぎゅっと胸の中に抱き込んで、永倉が目を閉じる。
いつか、これが当たり前の事になっても、今の気持ちを忘れない様に。ぎゅっと心に大切にしまい込んで千鶴もそっと目を閉じて永倉に寄り添った。



end.

20110925
前二作の未来?くらいな感じです。
新八さんの相手をするには千鶴ちゃんにすこし強気でいってくれないと話が進まない……気がします。
新八さんは、いつまでも「ちゃん」付けで呼んで千鶴ちゃんに拗ねられていればいいと思います。

本当にわたしの中の新八さんって……orz。
本当は、カルネ無配に乗せたかったお話です。間にあわなかったんです……。


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