WEB CLAP LOG 04

てっぺんまでもうすぐ

 幼馴染だった千鶴とやっと晴れて両想いになったのはいいけれど。周りはそう簡単に許してはくれなくて。特に沖田や斎藤、千鶴の兄である薫が事ある毎に邪魔をしてくれる。もし、自分が彼らの立場だったら・・・と考えると同じようにしたかもしれないと思う自分がいるから、決定的に強く出る事が出来ない。それでも、このまま情けなく妨害されてばかりもいられない。そう決意した平助と千鶴は、とうとう追手を振り切って、二人きり遊園地でのデートに漕ぎ着けた。
 やっと二人きりのデート、少しは進展したいと平助は密かに考えていたが、どさくさにまぎれて手を繋ぐのが精一杯。小さいころから何度となく繋いだ手は、同じようで違う感触。関係の名前が変わっただけで、こんなに愛おしく離し難くなってしまうんだと思い知る。
 妨害のあることが当たり前だったからか、最初はびくびくとしていたが、少し経てばそんな不安も消え去って、二人は遊園地を目一杯楽しんだ。
 そんな楽しい時間の過ぎるのは早くて、気付けば日が暮れて閉園時間まであとわずか。
 最後に、と観覧車に乗る。
 外の喧騒とは切り離されて、二人きりの静けさ。
「ねえ!平助君、見て見て!すごくきれいだよ。」
 どんどん高くなる。外に広がる夜景に、千鶴が声を上げる。
 てっぺんまでもうすぐ、だ。
 平助の眼には、夜景を見詰める千鶴の横顔しか見えない。
「きれいだ。」
「そうだね、夜景きれいだね!」
「違うよ、千鶴がきれいだって言ったんだ。」
 その言葉に、千鶴が振り返る。その先には平助の真剣な表情。そっと平助の掌が千鶴の頬に伸びる。触れた一瞬千鶴の瞳が揺れる。だけど視線に射られた身体は動かない。
「平助君・・・。」
「千鶴。大好きだ。」
 そっと囁くように告げて。

 夜空を独り占めした瞬間。
 二人の影が重なる。



end.

20110123無料配布【LoveSongs】より


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