WEB CLAP LOG 01

THE END OF THE WORLD

 暗い部屋の中でお互いを確かめ合う。いつもこうして暗い部屋。俺たちにちょうどいい明かりが手に入らない。小さいランプの明かりでは明る過ぎて。お互いを確かめる為に必要な明かりすら、俺たちには手に入らないのだろうか?ただ、俺たちはお互いが愛しくて、離れられないだけなのに。

 俺と千鶴は、高校で出会った。だが俺は教師で、あいつは生徒で。禁断の恋、という奴だ。
 いつもの俺ならこんなリスキーな恋を選ぶことなどなかったはずだ。だか、千鶴に全てを持っていかれた。本気で人を愛するという事がこれほど恐ろしいことなのだと思い知らされた。お互いの気持ちが知れてしまえば、転げ落ちるのはあっという間で。俺は、誰にも相談できない秘密を持ってしまった。
 あと、どれだけの間、この背徳感に苛まれながらこいつに触れるんだろうか。

 暗闇の中、千鶴が俺の耳元に唇を近付ける。そして、とてもとても小さな声で呟いた。
「土方先生。大好き。」
「・・・・っ。」
 二人しかいない部屋だというのに誰にも聞こえない様に、耳元で告げられるその言葉に息をのむ。そんな切ない言葉に俺はなんて答えればいいのだろう。
 俺は、千鶴を抱きしめていた腕を伸ばし、ベッドサイドのランプをつけた。眩しそうにする千鶴を、俺は痛いほどに抱きしめる。
「先生・・・?どうしたんですか。」
「・・・ばかやろう。この部屋には俺しかいねえだろう?どうしてそんな。・・・誰にも聞かれないような声でそんな事言うんじゃねぇ・・・。」
 俺はきっと世界が終っちまうような顔をしているだろう。そんな情けない俺の背中に千鶴は腕を回して、今度は、はっきりと口にする。
「土方先生。大好き。」
 その言葉に、ハッとして腕を解いて千鶴の顔を見下ろした。赤く染めた頬は、嬉しそうに微笑んでいた。ああ、そうか。明かりを恐れていたのは俺だけだったんだ。
「・・・ああ、俺もだ。」
 そういって、俺は千鶴を再び抱きしめた。



end.

20110123無料配布【LoveSongs】より


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